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TOPOB/OG/受講生の声>津田久資氏
卒業生と受講生の声

 

田村耕太郎氏

津田 久資氏

〔UC, Berkeley, Haas MBA・(株)ジュライ代表締役〕
http://www.july7.co.jp/index.html

プロフィール
1958年大阪府生まれ。東京大学法学部卒業。カリフォルニア大学バークレー校経営大学院卒業後。博報堂、ボストン・コンサルティング・グループ、チューリッヒ保険で、戦略の立案・実行に従事する。㈱Julyの代表取締役としてマーケティング・コンサルティング活動を行なうなど、多方面で活躍中。最新刊に『超MBA式ロジカル問題解決』がある。


第1回:「超MBA式ロジカル問題解決」
11月に出版された「超MBA式ロジカル問題解決」では、身近な事例から結論志向の大切さを説かれています。また、具体的な事例を豊富に交え、論理的思考を実践するツールの一つMECE(Mutually Exclusive Collectively Exhaustive)を実用的な形で紹介されており、納得しながら論理的思考力を身に付けられるよう、工夫されています。この本は、全国各地で実施されている様々な企業内研修のエッセンスでもあると思います。研修を通じて、日本のビジネスパーソンの優れている点や欠けている点など、どのようなことに気づかれますか。また、日本が再び活力を取り戻すためには、これからのビジネスパーソンには何が必要ですか。

まず優れている点は、まじめだということでしょうね。一般化してしまうと、それしかないと思う。欠けているのは能力ではなくて、能力に付随するというか、まぁ、能力ゆえになんですけど、議論ができない。ちゃんとした議論ができない、これが一番目に付きますね。論理的思考能力がないということです。論理的思考能力というのは何かと言うと、論理というのは普遍的なものですよね。イメージで言えば、Aという言葉があるとします。Aという言葉は、誰が使ってもAなわけですよ。ところが勝手にAという言葉の解釈にいろんなものをくっつけてしまう。これでは話をしても議論にならない。議論は共通の言語がないとできない。議論をしているつもりでも、お互いに使っている言葉が全然違うので実は議論になっていないというのが、研修でよくわかりますね。それではそれは何かというと、議論ではなく、「思いつき合戦」なんですよ。議論は積み上げて、積み重ねていくものじゃないですか。多くの人はそれができてないですね。

皆さん誤解している部分があるんですね。本にも書いたことなんですが、論理的思考能力とは「構築物を作り上げる」というイメージなんですよ。家を作ろうとするには、まず「一つ一つのしっかりした部品」が必要。そして「組み立て方」がきちんとできることが必要。両方必要なんですよ。「ロジカルシンキング」というと後者、つまり「組み立て方」だけと思っている人が多い。だから「演繹」、「帰納」、「MECE(ミッシィ)」といった言葉がすぐに出てくる。しかし、私が研修で経験したなかでは、「部品」ができあがっていないために論理的思考ができていないケースが多い。なぜ「部品」ができないかというと考え方が浅いんです。「効率的」とか「顧客第一主義」とか、あるいは「戦略」とか、耳に易しいキーワードは出てくるが、具体的にその「戦略」が何なのかと訊いても答えられない。ものすごくポワーンとしたところで終わっている。思考停止してしまっているんですね。

「言葉を詰める」ということは、必要十分な言葉で表現を詰めるということ。つまり、考えるということ。それができないのは、同じカルチャーのなかで、「だいたいこのへんをやっておけばうまくいく」という考え方でできてきたからです。私の研修では、異業種の方をミックスして行うことがあるんです。そうすると面白いですよ。日本人だから日本語としては通じる。しかし、自分が当然と思って使っている言葉が、異業種ではまったく当然ではない。自分たちの使っていた言葉が普遍的な言葉ではないことに初めて気付く。そういう場面をよく見ます。結局これでは効果的な議論にならない。議論ができなければ、ひとりの能力がすごく高くても見込まれる結果は多寡が知れてますよ。「3人寄れば文殊の知恵」でしょ。3人寄っても思いつき合戦だったら「寄った」ことにはならない。

MBA留学をするとケーススタディなどをしますが、MBAのレベルは所詮思いつきです。それほど役には立たない。私の場合は、論理的思考能力は、コンサルティング・ファームで鍛えられたのと、やっぱりコンサルティング・ファームには優れた人材がいますからね、あとは本を書いて養われたと思います。喋っている時というのは、何となく浮かんだことを言葉にしている伝言ゲームのような状態。書くということはそういうわけにはいかない。「思いつき」ではいけないと気付いた人にとっては、議論しているようで思いつき合戦しかしていない状態はちゃんとわかります。正直言ってMBAを取って帰ってきたからといって、既にその能力を身につけているわけではない。ただ、何もこれまでしなかった人が、外国人と議論するというのは、先程の異業種の研修同様に良いと思います。

「効率的」と言っても言葉だけで何もしない人が多い。日本人には、不完全情報状態でも結論をもつという「マインド」が足りない。アクション、そこから結論まで到達させるスピードを重視する結論志向ですね。完全情報志向の人が未だに多いんです。アメリカ人の場合は、まずいきなりやってみるというスタイル。どうしようもない人がそれをやろうとすると、本当に単なる思いつきになってしまいますけどね。そういう意味で、MBAの価値というのは「マインド」の部分だと思うんですね。ロジックの上達はそれほど期待できないし、ロジックは言葉だから語彙の足りない人は鍛えようがないですよ。私は常に、論理的思考能力は国語力と算数力だと言っています。なぜなら、ひとつひとつの「部品」は語彙であり、その次の段階の「組み立て」は、足したり引いたりの算数力だから。これはたとえMBAにいっても鍛えられない。MBAで鍛えられるのは「マインド」の部分です。とにかく、不完全な情報状態でいまやるとしたらどうするかを考える。結論志向の「マインド」、狩猟民族気質、アメリカ人気質なのか、アメリカ人気質なんでしょうね。たとえば、日本においても戦国時代はそうだったわけで、武将は情報が少ないから結論が出ませんでは生きていけない。殺されちゃうわけですよ。つまり、現代においては、「ビジネスは戦争である」という意識をもつことが異常に足りなかった。潰れた会社もやっぱりその意識がなかったんじゃないですか。日本がこれからもっとよくなるには、ひとりひとりが活力を取り戻すことによって日本が活気付くという流れ、それしかないでしょうね。


第2回:起業
MBA取得後、ボストン・コンサルティングからチューリッヒ保険、そして起業と順調にキャリアを築いていらっしゃいますが、MBAを取得される前から長期的な目標として起業されることをお考えだったのですか。それとも、取得後にお考えになったのですか。サラリーマン時代と最も変わったのはどのような点ですか。次の目標をどのように設定されていらっしゃいますか。

まったく長期的な計画ではありませんでした。私自身は起業しているという意識がいまだにあまりない。「企業を作りたい」という意識は、実はあまりないです。昔から教えることが割と好きで、コンサルティングするというほうが自分の性に合っているんですね。あとは、喋ることと書くことですね。社長になることが目的という人がたまにいますけれど、私はそういう人がいてもおかしくないと思います。私にはそういう意識は無い。前の会社を辞め、ヘッドハンターからのいくつかのオファーを検討する間、まだいろいろとお話しをいただける状態だったので、温めていたアイディアをすべて本に書いてしまおうと思い、そうこうしているうちにいろいろな依頼がバンバンくるようになりました。それからは、済し崩し的にという感じです。起業に関しては、あまり参考にならないかもしれません。起業に関して参考になることを言うとすれば、そこで得られたのは「自由」ということですね、自分ひとりでやっているうちは。自由っていうのは怖いものなんですよ。私が小学生の頃、ある文章を読みました。それは芥川龍之介の『朱儒の言葉』の「山巓」という件でしたが、いまだに気に掛かっていて、こういうことかとやっと分かった。『自由というのは山巓(山の頂上)の空気に似ていて、どちらも身体の弱い者には耐えられない』、自由というのは逆に辛いんですよ。起業するということは、簡単に言うと「サラリーマン」じゃなくなるということです。怖さと引換えに得られるとも言えます。自由の怖さに対する覚悟のない人は、起業はやめたほうが良いです。これはある程度、外資系企業に近いところがありますね。唯一の軸はアウトプットだけですから。外資系ではビジネスのスタイルは自由ですが、その責任の取り方がアウトプット、結果を出すことに集約されます。

私が具体的な目標というより、面白いなと思っていることですが、本を一冊も書いていなかったときは、本当に本なんて書けるのかなと思ったんですよ。書いてみようと思ったときも、書いても原稿用紙20枚位で終わるんじゃないかなと。それが実際は470枚になりました。それで今度の本で480枚位書いている。その間に2冊出しているから、今まで書き上げた原稿をあわせるとこの4年間で2,000枚以上書いている。つまり、人間の頭の中にはものすごい量の情報が詰まっているということを言いたいんです。考えないことにはそれらを掘り出せない。ところが、例えば「効率化」といったキーワードで止まるから、思考停止してしまって出てこない。本当は、一旦考えはじめるとすごくいろいろなことが浮かんでくる。すると、自分は一体どれだけのものを持っているんだろう、ということになる。今の段階で、私は本の企画を3、4つ持っています。それをとにかく全部出し切った時、世の中にどれだけ役立つのだろうと、そういうイメージですね。


第3回:MBAとビジネスキャリア
MBAとはどのように活用するものですか。MBA取得後に就職され、さらに起業されて今日に至るまで、ビジネススクールで得られたものは津田さんのビジネスキャリアにどのように結びついていますか。最後に、これからビジネススクールを目指される方へのアドバイスをお願いします。

周知の事ですが、最近はトップ10とかトップ20といったところはすごく難しいでしょう。そうするとランク的に下のほうの、名前も聞いたこともないような学校に行く人がいます。正直言って、アレって、行ってもいいのかなと本当に思いますね。まず考えなくちゃならないのは、MBAに対して2つの視点を持たなくちゃならいということです。ひとつは、MBAという肩書きですね。もうひとつは、それによって身に付けられるスキルです。前者は、トップスクールじゃないと恐らく意味がない。とこらが、未だに行けば何とかなると思っている人が多くいますね。以前、御校でサバイバル講座を担当していたとき、受講した女性の方の相談にのったことがあります。話を聞いてみると一校しか受からなかったアメリカの名前もよくわからない学校に行くつもりらしく、帰国後は投資銀行に入りたいと言う。そんなものお呼びも掛からないと告げると、エェーと驚愕している。だから、とにかく一年でも待って、点数を上げて、上位校に入るようにしなさいとアドバイスしました。すると、会社辞めちゃいました、と言うんです。私がビックリしちゃいました。どういっていいかわからなくてですね…。MBA留学は自分への投資です。まぁ、お金はまだいいんですが、時間なんです。準備期間も含めて、その後2年間かけて、ある程度お金もかけて、タイトルによって市場価値が上がらなければ何の意味もない。そういう場合は、正直言って、留学をやめたほうが良いと思います。しかも、MBAのタイトルだけでこれまでの経歴をひっくり返らせる程のインパクトがあるのか、というのが疑問ですね。Harvard MBAホルダーと言っても、どうですかね、少なくとも日本人が採用者である場合は。MBAは選挙と違って、取ったからと言ってそれ程の力はありませんから。タイトルの付加価値を上げる、簡単に言ってしまえば給料を上げるということ。タイトルとして本当にその学校で良いのか、さらにはMBAで良いのか、そこのところはかなり深めて考えていかなければならないと思います。もうひとつは、タイトルそのものではなくて内容面、スキルに関することです。私は、コンサルティング・ファームに行きたかったし、法学部をでて、広告代理店で仕事をしてきましたので、アカウンティングやファイナンスについては何も知らなかったわけです。そういうものを学びに行くということに関して言うと非常に有効だと思います。例えば、日本の大学で商学部や経済学部でしっかり学んで、銀行、あるいはメーカーでも財務関係の部署できちんと働いていたら、MBAの講義の内容なんかは何でもないですね、きっと。MBA留学してきたといっても、それだって2年間ですから、妙に高く評価されていること自体が変ですよね。
そうは言ってますが、肩書きという意味では私は役に立っていますね。恩恵は受けています。以前驚いたのは、マーケティングを教える人を紹介してほしいという打診がありまして、私はよく知っている、MBAホルダーではないが大変に優秀なビジネスマンを推したわけです。ところが先方では、MBAをお持ちの方がいいんですがと言うんです。私の部下にもMBAをとってきている者がいましたが、こういう人がMBAを持っているから困るんだという人がいるのも事実です。そこらへんの差をしっているので、そういったことがでてくる風潮には冗談じゃない、というところがあります。

MBAできっかけ、機会が広がるというのはあるけれど、トップスクールに行かないと機会も広がらないでしょうね。スキルを身につけて帰って起業しようというのなら、どこでもいいと思いますよ。私の個人的な意見で言うとMBAで役に立つのはタイトルだと思ってます。そういう意味ではトップスクールに行かないと意味がないでしょうね。人脈は実際どうかというと、外国人より日本人のほうが大きいですよ。もちろん外国人との人脈を使っている人もいるけど、もともと帰国子女の人でしょうね。

 

 

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