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TOPOB/OG/受講生の声>西田徹氏
卒業生と受講生の声

西田 徹氏
〔New York, Stern MBA・(株)Eメールマーケティング研究所 代表取締役〕

プロフィール
1963年三重県生まれ。京都大学農学部卒。同修士課程卒。リクルートに入社。企業派遣でSternに留学。その後、ボストン・コンサルティング・グループ、㈱カレンを経て2003年1月にEメールマーケティング研究所設立。主な著書に、「Eメールマーケティングで売上を100倍伸ばす方法」日経BP、「説得できる企画・提案200の鉄則」日経BP、「ここまできた!モバイルマーケティング進化論」日経BP企画 がある。現在、コンサルタント、著者、研修講師として活躍中。

第1回: MBAの価値を考える
西田さんは、リクルートからの最初の企業派遣生としてNYU, Sternに留学されています。100名の応募者の中から選抜されたそうですが、どのような気持ちでMBAを目指されたのですか。

平易な言葉で言うと「偉くなりたい」。ただその一心でしたね。今思うと若気の至りなのですが、当時の自分には人間を判断する軸が1つしかなかったのです。それが、「偉い⇔偉くない」です。僕の目指す「すごく偉い」カテゴリーには、ノーベル賞受賞者、一部上場企業の社長、戦略コンサルティングファームのパートナー、尾崎豊といった一般的には全く別カテゴリーの存在が並んでいました。そのどれでも良い。ただ「すごく偉く」なりたかったのです。そのためのステップである「わりと偉い」に、僕としてはMBAという資格が位置づけられていたというわけです。だから、当時のリクルートとして初めての試みであった海外留学に、社員が100名しか手を上げなかったことは大変不思議でした。みんな偉くなりたくないのか!?と(笑)

西田さんにとってビジネススクールでの体験・経験は財産になっていますか。どのようなところにMBAの価値を見出せますか。

MBAという資格が水戸黄門の印籠のようなものだと思う人がいるかもしれません。が、少なくとも僕にとっては全く違います。普段は自分がMBAを持っていることを忘れていますし、卒業証書は冷蔵庫の上でホコリをかぶっています(笑)。

もう少しまじめにお答えしましょう。一般的にMBAで学ぶ価値は、ビジネススキル、英語、欧米文化の理解という3本柱で構成されます。が、それに加えて「MBA」というブランドの価値も見逃せません。この、ブランドという点に絞ってお話したいと思います。

仕事上でキーパーソンに会う時、約10秒で「この人とは真剣に話をする価値がある」と思わせる必要があります。そこで必要なのがブランドです。僕のキャリアの初期には、「リクルート」という社名の入った名刺がそうでした。そして留学後は名刺に「経営学修士 ニューヨーク大学」と記載すると、もちろんそれなりの効果がありました。次に名刺は「ボストン・コンサルティング・グループ」に変りました。そして、今は自分が書いた本を1冊持ってゆくことにしています。

こう書くと、西田は古いブランドを捨て去って、新しいものに次々と着替えたようにとれるかもしれませんが、それは違います。むしろイメージとしては「雪だるま」です。僕の持論、「ブランド雪だるま論」というものを紹介しましょう。小学生のころ、雪の積もった朝に雪だるまを作ったことを思い出してください。小さな球を作ってコロコロと転がします。最初は効率が悪い。でもある程度の大きさになると玉の重さが雪を押し付け、まさに「雪だるま式」に大きくなったでしょう。最初に手で固めた小さな雪球。それが僕にとってはリクルートというブランドです。次に効率が悪いながらも転がして大きくした段階。それが僕にとってはMBAというブランド。そしてその上にボストン・コンサルティングというブランドが上塗りされ、さらにネットベンチャー経営者、著名な出版社から本を出している人、という具合に成長してきたわけです。今の僕のブランドの表面にはMBAという存在は見えません。が、雪だるまをパカッと割ってみれば、その中にMBAというレイヤーがしっかりと存在するのがわかるはずです。MBAというブランドなしにはボストン・コンサルティングに入れなかった。ボストン・コンサルティングでのノウハウなしには本が書けなかった。本を書かなかったら今の自分はないというわけです。

MBA取得後、ボストンコンサルティンググループ(BCG)では様々な面で鍛えられたとのことですが、ビジネススクールでのトレーニングとの違いはどういったところですか。駿台グループが「今後10年間の教育産業での有望分野を調査して欲しい」と依頼したとします。MBA 2年制の西田さんはどのように調査されますか、コンサルタント2年目の西田さんではどのように変わるでしょう。

MBA2年目の僕だったら、習ったフレームワークを早速使ってみると思います。5フォースで教育産業の魅力度合いを整理したり、PPMで駿台グループが持つ事業ポートフォリオを判断したり、SWOTで駿台の強み・弱みを確認したり。もちろん米国の先進事例も調査するでしょうね。こういった作業はもちろん重要ですが、これだけでは企業は成功しません。誤解している人が多いのですが、ビジネスには詰め将棋のような「正解」はありません。運が大きく左右する世界でもあります。MBAで習うスキルは、正解を導くスキルではなく、意思決定者にとってわかりやすいように状況を整理するスキルなのです。

よって、コンサルタント2年目の僕だったら、真っ先に駿台の理事長と2時間程度面談させていただきます。夕食をご一緒して本音が聞ければさらにグッド。そこで「あなたは、この企業をどうしたいのか。」という素朴かつ本質的な問いに対して、一緒に議論させていただきます。経営者がWILLを固めるサポート。それが経営コンサルティングの本質だと思います。

第2回: キャリアを意識する
コンサルティングの仕事は参謀であり、イメージされていたキャリアとのずれを感じ始めた西田さんは、自らも積極的に動く大将を選択されます。「西田流・大将と参謀論」をお聞かせ下さい。大将に求められる資質やスキルの中で、西田さんが「欠かせないもの」と考えられているものは何ですか。

まず外資系戦略コンサルティングファームの仕事内容から解説しましょう。企業が競合に勝って生き残るには3つのステップがあります。

ステップ1:競合に打ち勝つ素晴らしい戦略を立案する
ステップ2:それを正式に意思決定する
ステップ3:意思決定した内容を実行に移し、成果をあげる

僕はステップ1が戦略コンサルの仕事だとイメージして入社しました。が、実際はステップ2が仕事の大半でした。つまり、たぶん正しいであろう戦略は既にクライアント企業にあるのです。が、それはモヤモヤした状態のものであり、またデメリットをとりあげて反対する人もいて、このままでは正式意思決定できないわけです。それを整理整頓し、メリットとデメリットを洗い出し、事実情報で議論をサポートし、時には憎まれ役を買って出る「役員会通し業」がコンサルタントの仕事だったのです。

別の切り口から戦略コンサルティングの仕事を解説すると、「経営者にWILLを迫る仕事」とも言えます。ビジネスには詰め将棋のような「正解」はありません。なぜなら状況を規定する変数の数が異様に多く、また得られる情報はほんの一部であり、さらには未来には運の要素が大きくかかわってくるからです。そこでの意思決定で必要なのは、企業のリーダーである経営者が「俺はこうしたい!」という主体的意思なのです。一流企業の経営者であってもWILLをしっかり持っている人は多くありません。彼らに対し、「今、目の前にABC3つの分かれ道があります。それぞれの道の特徴は既に述べました。さあ、社長。どの道に進みますか。今すぐ決めてください!」と迫るのがコンサルタントの仕事なのです。

経営コンサルタントは参謀です。クライアント企業の経営者は大将です。僕は悩みました。なぜ自分が仕えている大将たちは自分ひとりでWILLを発揮できないほど弱々しいのか。また、この参謀としての仕事が自分にとってはなぜ空虚に感じるのか。多くの経営者が弱々しいのは、ご質問にあるようなスキルや資質が原因ではないと思います。むしろ多くの社長が「サラリーマン経営者」であることにその根っこがあるのです。

株式の10%~100%程度を保有するオーナー経営者ならWILLがあいまいということはありえません。自分が保有する数千万円から数十億円が紙切れになるか100倍になるかが常に迫られているのですから。また、仮に株式の過半数を保有していれば、意思決定プロセスを外注するという不思議なことをする必要もありません。意思決定が正しかった場合のご褒美は自分のもの、意思決定が間違っていた場合の手痛いロスも自分のものなのです。「鶏口となるも牛後となるなかれ」。この時点から僕は大企業の雇われ大将への興味を失い、中小企業のオーナー大将に魅力を感じはじめたわけです。その後多くの中小企業オーナー経営者の方に会う機会を得ました。やはり僕の仮説は正しかった。いわゆる「素晴らしい人物」と出会う確率は大企業サラリーマン経営者よりも、中小企業オーナーのほうが圧倒的に高かったのです。そして自分自身もオーナー経営陣の一員として、ネットベンチャー経営にたずさわることになったわけです。

E-mailマーケティングを始め、ロジカルシンキング、あるいはマーケティングなど、各方面で様々な研修を実施されていますが、ほとんどのビジネスパーソンは「キャリアプラン」に対する考え方が甘いとお考えのようです。リクルートから企業派遣でSternに行かれ、BCGを経て独立、また著書多数の西田さんのように、成功を収めている方からみて、若手ビジネスパーソンはどのように「キャリアプラン」を意識し、自らを高めればよいでしょうか。

年収、ポジション、資格などにこだわってキャリアを高める人が増えてきました。これは悪いことではありません。が、もっともっと大事なことがその前にあるのです。それは「何のために働くのか?」という壮大な命題に答えようとする努力です。「そんなの金のために決まってるじゃん」という人もいるかもしれません。しかし、年収280万円で幸せを築いている人もいれば、年収8000万を得たことがきっかけで人生を破綻させてしまった人もいるのです。

「何のために働くのか?」この答えは1つではありません。1億2千万人の日本人が、ひとりひとり異なる顔を持つように、「何のために働くのか?」の答えも1億2千万通りあるのです。誰のものでもない、自分だけの「何のために働くのか?」を真剣に考えないと、それ以降に立てたキャリアプランが全て砂上の楼閣となってしまいます。

ちなみに、人間の数だけある「何のために働くのか?」をおおまかに8つに分類したシャインという人がいます。それはキャリアンカーという概念。キャリアの荒波でも揺るがないイカリ(アンカー)という意味です。その8つを、シャインの原文から僕が翻訳・要約したものを下記に示します。自分はどのアンカーを大切にしているのかをあらためて考えて見るのも面白いでしょう。また自分で思う自分と、他人から見える自分は意外と異なります。友人・知人に「オレって、どれを大切にしているように見える?」などと聞いてみると新しい自己発見があるでしょう。

専門性指向:専門領域で力をつけることに注力
経営者指向:組織の階段を上り詰めることに注力
自由指向:他者に縛られない自由を重んじる
安定指向:雇用の保証や地位の安定を重んじる
起業家指向:世の中にないサービスを作り出すことに夢を求める
社会貢献指向:世のため、人のためになることにやりがいを感じる
チャレンジ指向:内容よりも、ハードルが高いこと自体に燃える
バランス指向:仕事とそれ以外をバランスさせることを重視

注)Scheinの原文を元に西田が翻訳/要約

参考書籍:「Career Anchors , Discovering Your Real Values」
http://www.amazon.com/exec/obidos/tg/detail/-/0883900300/


第3回: E-mailマーケティングに挑む
お話し中も再三「ビジネスモデル」という言葉を使われていました。「ビジネスモデル」としての可能性が高いからこそE-mailマーケティングという分野を開拓されてきたと思います。「Eメールマーケティングで売上を100倍伸ばす方法」「Eメールで市場を即100倍に広げる本」「ここまできた!モバイルマーケティング進化論」と次々と出版されてきました。いずれも図解が豊富でたいへんわかりやすく構成されています。今後はどのような切り口でE-mailマーケティングに挑まれますか。また、これからのE-mailマーケティング、さらには、マーケティングはどのように進化するとお考えですか。

ご質問にお答えする前に、私の提唱する「Eメールマーケティング」は、単にメールで販促を行うことと全く異なるということをお話しましょう。

●Eメール+マーケティング=Eメールマーケティング?
「マーケティング目的でEメールを配信する。これがEメールマーケティングだ。」確かに間違いではありません。そういう意味では、今は相当多くの企業がEメールマーケティングに取組んでいます。でも、その中には、大きな成果が上がる企業と、コストばかりかかって失敗に終わっている企業が存在します。これらの2群の企業を観察していると、今からお話しする3つの原則を守っている企業と、そうでない企業の違いであるケースが非常に多いことに気付きます。言い方を変えると、真の意味でのEメールマーケティングを実現するには、以下の3つを遵守する必要があるのです。

●継続配信
原則の1つ目は「継続配信」です。「Eメールを1回送ってみたが成果が出なかった」と嘆いているネットショップの店長さんはこの原則を知らない典型的な例でしょう。私はこの「1通送って終わり」症候群は、郵便DMの連想が大きな原因になっていると思います。1通あたりのコストが100円~200円かかる郵便DM。それと同様に、EメールDMも1通で完結しなければならないと根拠なく思い込んでいるとしたら残念なことですね。

Eメールで成功している企業は、全てと言って良いくらいに継続的にメールを配信しています。メールマガジンのように定期的に続くものもあれば、資料請求した人を3通程度でフォローする回数限定メールもあります。いずれにせよ、何通かのEメールが届く間に徐々に購買意欲が高まり、どこかのタイミングで「買おう!」「申し込もう!」「お店に行こう!」となるわけです。

●双方向
原則の2つ目は「双方向」です。皆さんが普段仕事やプライベートに使っているメールソフトには当然のことながら、返信ボタンがついています。これがメールマガジンなどの一斉配信を行った際にも大きな意味を持ってくるのです。つまり、発行元が意図しなくても、読者からの返信が起き易い。問合せ、励ましといったポジティブなものから、ご意見・クレームといったネガティブなものまで、様々な返信が来ます。これはTVコマーシャル、新聞広告、郵送DM、ファックスなど、従来のメディアにはない、Eメールならではの特徴といえます。この性質を前向きに捉え、「もっと沢山の返信をもらおう」「クレームを新商品開発につなげよう」「問合せを確実に受注にまでもって行こう」といった仕掛けをすることをお勧めします。

ちなみに、「送るメールの中身を思いつかない」と嘆いている方には、この双方向というキーワードが救いになるはずです。つまり、こぼれ話や、体験談、さらには商品の利用報告などを読者から募集し、それを次号以降のメールコンテンツにするわけです。文章のネタが出来るというだけでなく、読者と発行元との一体感が醸成されるのも見逃せない効果です。

●One To One
原則の3つ目は「One To One」です。例えて言うと、なじみの料理屋で「いつものやつを!」とオーダーする心地よさをEメールの読者に味わってもらうというもの。具体的には、顧客データベースにある、年齢・性別・居住地域・商品への嗜好・購買履歴・ライフスタイルなどに基いてメール文章を自動生成するわけです。

ただし、注意点があります。それは、配信元の自己満足にならないこと。「当社は8×9×6×7=3024通りのOne To Oneマガジンを配信しているんだ!」という事例を見たことがあるのですが、出来上がったメール文章からは、いったい何処がOne To Oneになっているのかわからない。あるいは逆に自分の名前などの個人情報が何度も出てきて、読んでいてドキっとする。

そんな自己満足One To Oneメールにならないよう、「どの属性(例えば性別)でOne To Oneにするのか?」「具体的にどんな文章(例えば、男性用の文章と女性用の文章)を差替えるのか?」の綿密な設計が必要です。また、こういったメールの配信にはある程度のコストがかかる専用の仕組みも必須です。

●新しいマーケティング=「特定多数」へのマーケティング
さて、いよいよご質問にあった、新しいEメールマーケティング、新しいマーケティングについてです。「ブロードバンド化」、「モバイル端末の普及」、「個人情報意識の高まり」など新しいトレンドが沢山ありますが、これらひとつひとつに過剰に反応しすぎるのは「木を見て森を見ず」だと思います。であれば、「森」に相当する一番本質的な変化は何か? 私はそれを「特定多数」という造語で呼んでいます。

今までは「不特定多数」というキーワードの時代でした。まさにTVコマーシャルに代表されるマスマーケティングの世界です。例えば、2003年末の「曙 vs. ボブサップ」は視聴率が30%を越えた言われています。コミュニケーションとしては大成功。でもこれをAさんが見たのか見なかったのか。Bさんが見たかのか見なかったのか。これらを知る手段はありませんし、マスマーケティングのプロには、こういう発想が欠如しています。

ところがインターネットは今までの「不特定多数」を「特定多数」に変えたのです。WEBではクッキーなどの技術を使えば相手の特定が可能です。メールマーケティングはもっと素朴。そもそもメールアドレスは個人にひもづいている存在なのですから。そして各種のログ解析を行えば、特定の個人の興味関心領域や、その関心の深まり度合いを測定することが可能です。そしてそれを10万人、100万人といった巨大な対象に対して自動で行うことが出来る次代になってきました。

「特定多数」のマーケティングの時代の主役はEメールです。が、もちろん表現力豊かなWEBの役割も見逃せません。また、リアルタイム性に長けたモバイル端末へのコミュニケーションもあわせワザとして行う必要があります。さらにはホット客の刈り取りは営業マンにつなぐといったように、リアルとの連携も巧妙に設計してゆく必要があるでしょう。顧客企業の守秘義務があるので社名は申し上げられませんが、こういった試みを着々と実施してノウハウを溜めている企業がいくつも出てきています。数年後には「特定多数」のマーケティング実施によって売上シェアを大きく伸ばす企業が注目されると思います。

 

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